あかずきんちゃん2




「うーん、こっち・・・だったけ?」

おばあちゃんちをめざしてあるくいーちゃんでしたが、なにせとうぶんたずねていません。もともときおくりょくもあまりいいほうではありませんでしたので、よくみちがわからないのです。

困ったなぁ・・・といーちゃんがウロウロしていると、

「あ、いー兄」

タバコをくわえたツナギのおとこのこがガードレールのほうからこえをかけてきました。

「何やってるんです?こんなとこで」
「ちょっとね。萌太君こそ、バイトの帰り?」

まあ、そんなとこです、ともえたくんはわらいます。
もえたくんは15さいでしたが、がっこうにはいかずに、いもうとと、まいにちバイトをしてくらしていました。
なんのバイトなのかはいーちゃんにはわかりません。
ツナギを着ているのでどこかの工事現場ででも働いているんだろう、とかってにかんがえていました。

「ところで、いー兄の持ってる、その赤い封筒は?」

もえたくんがくびをかしげながらききました。
ああ、コレ?といーちゃんはふうとうにめをやります。

「ぼくにもよく分かんないんだよね。と・・・いや、母さん曰く超ヒミツの極秘資料、だってさ。まぁ、気にならなくもないけど、母さんサイドのヒミツなんやらに関わると危険極まりないからね。ましてあの人も関わってくるとなると・・・」

「あの人?」
もえたくんがさらにくびをかしげます。
くろくてきれいなかみのけがぱさりとかたにかかります。
びしょうねんはどんなしぐさもさまになりますね。

「あばあちゃんだよ」
そういういーちゃんのこたえに、もえたくんは、ああ、とみょうになっとくしたふうでうなずきました。

「お遣い、というわけですか」
「まあね。全く母さんの奴ときたら人遣いが粗い・・・」

はぁ、とためいきをついて、そこで「あっそうだ」と、かおをあげました。

「ぼく迷ってるんだった」

そうです。いーちゃんはまいごだったのです。すっかりわすれていました。いくらきおくりょくがわるいとはいえ、ここまでくるとアルツハイマーをうたがいますね。

そんないーちゃんをみて、もえたくんは、ふ、とえみをこぼしました。

「全く・・・それならそうと早く言ってくださいよ、危うく迷子の仔猫ちゃんを見す見すと見捨てる無慈悲なわんこになるところだったじゃないですか」

「よく分かんない比喩だね。え、ていうか萌太くん、ぼくのおばあちゃんち知ってるの?」

ええまあ、とこたえるもえたくんに、めをまるくするいーちゃん。

「行ったことは無いんですけどね。知る人ぞ知る、といったところでしょうか」

僕らの間じゃあ有名ですよ、ともえたくんはつけたします。
ふうん、僕らの間ねえ。
いまいちきょうみがないようすのいーちゃんにくすりとわらいかけると、「さて、と」とたいせいをたてなおし、すいかけのタバコをガードレールになすりつけ、
ふんわりとてをさしのべました。

「急いでるんでしょう?」

いーちゃんにはもえたくんがてんしにみえました。

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とことことこ、と、
あるていどまできたところで、もえたくんはぱた、とあしをとめました。

「あれ?どうしたの萌太くん」
「ここです」

もえたくんがゆびをさしたそのさきには、まものでもすんでいそうなふかぶかとしたもりがぽっかりとくちをあけていました。
「ここ・・・?」嘘だと言ってくれ、とでもいいたげなかおのいーちゃんに、もえたくんはもういちど「ここです」とにっこりといいます。

「ピカチュウやキャタピーが出てきてもおかしくないな・・・」
ごくり、とのどがなります。
モンスターボール持ってくりゃあ良かった・・・めにみえてげんじつとうひするいーちゃん。こんなもりのおくだなんてきおくにはありません。そのきおくもどうだかうたがわしいようなかんじですが。

「まあ、基本的に真っ直ぐ行けば大丈夫なので、迷子の心配はしなくていいと思いますよ。それに、せいぜい出るとしたところで、コブラやクマさんといったレベルでしょう」

そんなもえたくんのことばに、どう考えてもピカチュウやキャタピーの方が無害だろ、とツッコんだあと、いーちゃんはん?とくびをかしげました。

「ええっと、萌太くんは一緒に来てくれないの?」

だって、じぜんにみちあんないだなんて。
そんないーちゃんのしつもんに、「すみませんがこれ以上は」と、もえたくんはちからなくほほえみます。

「僕としてもいー兄の力になれないのは至極残念なんですが、こればっかりは設定上どうにもならないんですよ」

そこでもういちど、すみません、僕の力が至らないばっかりに、といいました。
そんな、謝らないでよ、いーちゃんはこまったようにりょうてをぶんぶんします。
もとはといえば迷ったぼくが悪いのに、迷惑かけたのはぼくの方で、萌太くんがいないとこの入り口さえ到達できていなかっただろうし、真っ直ぐ行けばいいのなら大丈夫だよ、ぼく頑張る、

ひっしなかんじのいーちゃんをみて、もえたくんは、ふわりとほほえみました。
どうやらそれほどきにもしていなかったようです。
いーちゃんはほっとむねをなでおろし、じゃ、行ってきます、と、かたてをかるくあげました。

狼さんには気をつけてくださいね、ともえたくんはこたえ、ふたりはわかれました。


とにかく萌太くんを出したかった・・・! 萌太くんが大好きなんです。